私がJoomlaの日本語デモサイト運営を「時間の無駄」と断じて全削除した真実
技術と情熱の墓場 ―― Joomlaデモサイト運営の終焉
日本のJoomla界隈には、空白があります。Joomla 3.x以降、日本語で構築されたテンプレートのデモサイトが、驚くほどどこにも存在しなかったのです。
「誰もやらないのなら、自分がその架け橋になればいい」
そんな純粋、かつ無謀な使命感に突き動かされ、私は有償テンプレートを買い漁り、自力で日本語デモサイトを立ち上げ始めました。
当時は今ほど英語に慣れておらず、英語のダミーテキスト(Lorem Ipsum)が並ぶテンプレートを見ても、完成後の具体的なイメージが全く湧きませんでした。だからこそ、メニューから細かな設定画面まで、泥臭く一つひとつ日本語に置き換える作業を自分に課したのです。それはネットショップのサンプルであったり、ビジネス向けの構成であったりと多岐にわたりました。不具合が起きた際に「正常なモデル」と比較するための検証用サイトとしても、それは私にとって不可欠な存在でした。
しかし、その情熱を冷酷に打ち砕いたのは、他でもない、金を払ってまで信頼した「海外の開発元」でした。
Joomlaが3.xから4.x、そして5.xへと劇的な進化を遂げ、世界が新しいウェブ標準へと舵を切る中、その開発元はあろうことか、旗艦製品であるはずのテンプレートのアップデートを完全に放置したのです。
「有償で販売を続け、利益を得ているプロダクトでありながら、なぜ最新のCMS環境に対応させないのか?」
広告をバキバキに貼り、SEO対策に資本を投下している大手メディアに対し、個人がコツコツ作ったサイトは、たとえ中身が濃くても「情報不足」「つまらないサイト」というレッテルを貼られてしまう……。
つまり、読者のために「スッキリ見やすく」していた私のこだわりは、検索エンジンから見れば「やる気あんの?」という低評価に繋がっていたわけです。
そのあまりに無責任な姿勢に、私は憤りを通り越して、深い虚無感に襲われました。Joomlaのバージョンを上げられないということは、システムの根幹にセキュリティホールを抱え続けることを意味します。プロでなくとも、それがどれほど危険な「爆弾」を抱える行為かは明白です。
結局、プロでもない私個人が、貴重なプライベートの時間を削ってまで行っていたローカライズ作業は、砂漠に水を撒くような、あるいは最初から崩れることが決まっている砂の城を築くような、救いようのない「無駄骨」だったのです。数年前、私はその事実を認め、全てのデモサイトをサーバーから跡形もなく消し去りました。
現在、私のクリエイティブなエネルギーは「手芸」という、物理的な温もりのある世界に注がれています。コードやアップデートの有無に振り回されることなく、自分の手が加えた分だけ確実に形になる。その健全な達成感の中にいます。
時折、ふとした瞬間に「またデモサイトを作ってみようか」という思いが頭をよぎることもありますが、よほど宇宙的な規模で暇を持て余し、他に何もすることがないという極限状態にでもならない限り、あの報われない苦労の沼に再び足を踏み入れることはないでしょう。