メインコンテンツへスキップ

「幸福度No.1」の五年間

| Alaudae.JP

やっと、WEB構築以外の時間ができて、自分の思いをネット上に記載できるようになった。角館町に在住の仙北市民としての意見である。

はじめに白状しておくが、私はこの記事を一度書き損なっている。

総合計画だけを読んで、「幸福度No.1と言っているが、市は自分の仕事を測っていない」と書きかけた。それは早合点だった。実際の市民意識調査を開いてみたら、市はちゃんと自分の仕事を訊いていた。五十六の施策について、満足しているか、重要だと思うか、一つずつ市民に尋ねている。

だから今度は、計画書ではなく、調査結果そのものを読んだ。令和三年度から令和七年度まで、五年分ある。全部市のホームページに置いてある。

読んで、別のことが気になった。

幸福度は上がっている

幸福度は「あなたは、現在どの程度幸せだと感じていますか」という一問で測る。点数をつけてもらい、七点から十点を「高」とする。

令和五年度は38.8パーセント。令和六年度は45.6パーセント。令和七年度は46.8パーセント。

上がっている。市はこの数字を掲げる。

しかし住みやすさは下がっている

同じ調査の、少し先のページにこうある。

「仙北市の住みやすさについてどう思いますか」

住みよいと答えた人。令和四年度は55.0パーセント。令和七年度は39.2パーセント。三年で十六ポイント落ちている。

住みにくいと答えた人。令和五年度13.7パーセント、令和六年度17.4パーセント、令和七年度20.4パーセント。上がり続けている。

「家族や友人に仙北市への移住・定住を勧めたいと思いますか」という問いもある。勧めたい人は四年間ずっと二割五分前後。勧めない人は三割三分から三割九分へ増えた。四年連続で、勧めない人の方が多い。

これは私の解釈ではない。令和六年度の概要版に、市自身がこう書いている。

「『住みやすさ』の質問については、2年前に比べ『住みよい』の割合が減少し、『住みにくい』の割合が増加している。」

幸せは増えているのに、住みやすさは減っている。勧めたくない人が増えている。同じ市民に、同じ紙で、同じ日に訊いた答えである。

なぜ両立するのか

不思議なので、五年分を並べて読み直した。理由らしきものは、数字の中ではなく、物差しの方にあった。

令和六年度、幸福度の目盛りが変わっている。それまでは〇点から十点の十一段階だった。この年から一点から十点の十段階になった。市の報告書にも「※令和6年度は1-10に変更」と注記がある。

同じ年、施策の集計単位も変わった。それまでは産業振興、生活安全、健康福祉医療といった八つの大綱でまとめていたものを、総務部、企画部、市民福祉部といった八つの部局別に組み替えた。

施策の項目数も動いている。令和五年度は三十七、令和六年度は四十三、令和七年度は五十六。統合されたり、名前が変わったり、新しく足されたりしている。

幸福感につながる項目も、令和四年度は六項目だった。令和五年度から七項目になった。「暮らしの中で、健康になれるよう努力をしている」が足されている。

住みやすさの選択肢の言葉も変わった。「住みよい・まあ住みよい」だったものが「とても住みよい・住みよい」になった。

五年のうちに、目盛りも、選択肢も、項目名も、項目数も、集計の単位も変わった。

それでも棒グラフは並ぶ

にもかかわらず、概要版には各年度の棒グラフが仲良く並んでいる。令和五年度の隣に令和六年度、その隣に令和七年度。同じ物差しで測った数字であるかのように。

私は市が嘘をついていると言いたいのではない。目盛りを変えたことは、ちゃんと注記してある。隠していない。

ただ、注記を読まずにグラフだけ見れば、幸福度は順調に伸びていることになる。そして人は、たいていグラフしか見ない。

半分が「わからない」と答えている

もう一つ、気になる列がある。施策の満足度の表に「わからない」という欄があって、そこの数字が異様に大きい。

農業の振興58.8パーセント。都市計画の推進58.1パーセント。住宅・住環境の整備53.3パーセント。商工業の振興50.5パーセント。人材マネジメントの推進49.1パーセント。

半分前後の市民が、その施策について良いとも悪いとも答えられていない。

市はこの理由をこう書いている。「一般市民が直接的に関係する機会が少ない部局の施策については『わからない』という回答が多い傾向が見られた。」

その通りだと思う。訊かれても実感がないのだから、答えようがない。私だって「人材マネジメントの推進」に満足しているかと訊かれても困る。それが何のことか、暮らしの中で見たことがない。

だが、それで済ませていい話だろうか。

市民が実感できないものを、市民に採点させている。答えられない設問に「わからない」が並ぶのは当たり前で、その当たり前を「傾向」と書いて次の年もまた同じことを訊いている。

暮らしに届いていない施策が半分ある、という結果として読むこともできるはずだ。

「全国」はどこにもない

もう一つ。五年分どこを探しても、他の市や町と比べた数字が出てこない。全国のランキングも出てこない。測るのは仙北市が自分で市民に訊いたアンケートだけである。

「幸福度全国No.1」の全国とは、どこのことなのだろう。

回答率は下がっている

平成三十年度46.5パーセント。令和三年度46.1。令和四年度42.5。令和五年度40.1。令和六年度42.9。そして令和七年度は38.1パーセントで、過去最低である。

三千人に送って、返ってきたのが千百四十三人。そのうち二十八パーセントが七十五歳以上、九十パーセントが二十年以上この市に住んでいる人だった。

幸福度が上がっていく一方で、答えてくれる人は減っている。

ここからが本題である

以上のことは、全部ただの市民が調べられる。

私は専門家ではない。統計を学んだわけでもない。市のホームページから五年分のPDFを落として、順番に並べて、数字を突き合わせただけである。休みの日が何日かあれば足りる。

その仙北市には、産官学金あわせて十七団体を集めたDXの組織がある。企業も、大学も、銀行も、県の技術センターも名前を連ねている。

そしてその組織が掲げている目標が、これである。

「DXの推進により、地域の経済発展と市民のウェルビーイング向上を達成し、『幸福度全国NO.1のまち』の実現を目指す」

幸福度のためのデジタルである、とはっきり書いてある。

それでも、住みよいが十六ポイント落ちたことについての分析を、私は見つけられなかった。移住を勧めたくない人が四年続けて多数派であることについても、半分の市民が「わからない」と答えていることについても、見つけられなかった。

数字は毎年きちんと集められ、きちんと公表され、そこで止まっている。

デジタルだ、AIだ、実証実験だと言う前に、まず手元にある五年分を読めばいいのではないか。十七団体の力を借りるまでもない。素人が休みの日に数えられる程度のことなのだから。

念のため書いておくが、この組織のことも、構成も、掲げている目標も、公開されている情報である。誰でも見られるところに置いてある。

それをやらないのなら、集めた技術と人は、いったい何のために集めたのだろう。

結び

数字は私がここに全部書き写す必要はないだろう。市のホームページに、五年分そのまま置いてある。気になったら、自分で開いて読んでみればいい。

読めばわかる。ただ、読んだ人がどれだけいるだろうか。

その他のストーリー