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消えた選択肢

| Alaudae.JP

仙北市は毎年、市民意識調査というものをやっている。三千人に用紙を送って、千人ちょっとから返ってくる。結果は市のホームページで公表されている。

その中に、こういう設問がある。

「これからも仙北市に住み続けたいと思いますか」

令和四年度の選択肢は、六つあった。

 今の場所に住み続けたい
 市内の別のところへ移りたい
 県内のどこかへ移りたい
 県外へ移りたい
 別のところへ移りたいが移れない
 わからない

五つ目を、もう一度読んでいただきたい。

「別のところへ移りたいが移れない」

令和四年度、この選択肢を選んだ人は12.5パーセントだった。八人に一人である。


この設問を作った人は、たぶんちゃんと考えていたのだと思う。

住み続けたいから住んでいる人と、出たいけれど出られないから住んでいる人は、まったく違う。前者は満足で、後者は行き止まりだ。それを同じ「住んでいる人」として数えたら、何も見えなくなる。だから選択肢を分けた。私はこれを、いい設問だと思う。

角館で暮らしていれば、この12.5パーセントが誰のことか、だいたい見当がつく。家がある。畑がある。親がいる。仕事を変える年齢でもない。売っても二束三文にしかならない。だから動かない。動けない。

そういう人たちが、この項目にだけは正直に丸をつけられた。


その選択肢は、翌年から消えた。

令和五年度の概要版に、こう注記がある。「※令和5年度は『別のところへ移りたいが移れない』の項目を削除しています」

削除の理由は書かれていない。

消えたあと、「わからない」が増えた。令和四年度に12.1パーセントだった「わからない」は、令和五年度に19.4パーセントになり、以後二割前後で推移している。行き先を失った回答が、そこへ流れ込んだように見える。


そして、この設問についての市の説明はこうなっている。

令和五年度の概要版より。「昨年と同様に6割を超える方が今の場所に住み続けたいと回答をしています。」

六割を超える方が住み続けたい。たしかにそう書いてある。

ただ、その六割の隣にあった「移りたいが移れない」という一行は、もう紙の上にない。


誤解のないように書いておくが、私は市が何かを隠したと言っているのではない。削除したことは注記されている。隠すつもりなら注記もしないだろう。設問は毎年見直すものだし、選択肢が多すぎれば整理もするだろう。理由があったのかもしれない。

理由は書かれていないだけだ。

だから訊けばいいと思っている。なぜあの選択肢をやめたのですか、と。市民意識調査は市が作って市が公表しているものだから、訊けば答えが出るはずの話である。


ただ一つだけ、はっきりしていることがある。

令和四年度には、八人に一人が「移りたいが移れない」と答えていた。それは数えられていた。記録に残っている。

令和五年度からは、その人たちが何人いるのか、もう誰にもわからない。

いなくなったわけではない。数えるのをやめただけである。


仙北市は「幸福度全国No.1を目指すまち」を掲げている。

幸福度が上がっているという数字は、毎年きちんと公表される。住み続けたい人が六割を超えているという説明も、毎年きちんとつく。

そこに、出たいけれど出られない人の数は、もう出てこない。

数字が良くなったのか、数え方が変わったのか。せめてそこは、区別がつくようにしておいてほしいと思う。


市民意識調査は、令和四年度も令和五年度も、市のホームページに残っている。両方並べて読めば、私が書いたことは確かめられる。

気になるなら、自分で開いて読んでみればいい。

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