Joomlaでストアを築くあなたへ
漂流の果実と、研ぎ澄まされた「選別」の美学
JoomlaでECサイトを立ち上げようとする時、私たちは逃れられない深い霧の中に立たされます。「本当にJoomlaでいいのか? 世の中はWooCommerce一色ではないか?」——それは単なるツール選びの迷いではなく、自分のビジネスの未来をどこに託すかという、孤独で重い問いです。
かつてJoomla 3.xの時代、私たちの前にはEShop、HikaShop、J2Store、VirtueMartといった選択肢が並んでいました。しかし、日本市場に真に寄り添ったショッピングカートなど皆無に等しく、どれを選べばお客様に「この店なら安心して買い物ができる」と思ってもらえるのか、確信を持てる答えはどこにもありませんでした。
私自身、最初から正解を選べたわけではありません。設置費用や学習コストの壁を前に、大手プラットフォームへ逃げたくなる瞬間もありました。当時の自分のスキルを鑑み、多機能ゆえに難解なHikaShopを避け、身の丈に合ったJ2Storeを選んだのは、当時の精一杯の決断でした。しかし、時代がJoomla 4.xから5.xへと猛烈なスピードで移り変わる中で待っていたのは、信じていた開発元が更新を止め、サイトが事実上の放置状態になるという絶望でした。セキュリティ管理すらままならない状況に追い込まれた時、私は一度、撤退すら覚悟しました。
しかし、そこで私は立ち止まらず、半年近い時間を投じてシステムの心臓部をHikaShopへ、デザインの基盤をYootheme Proへと完全に作り直す決断をしました。その過程で、ある興味深い事実に直面しました。HikaShopのマーケットプレイスには、かつて公式やサードパーティから提供されていたLINE Pay専用プラグインが存在し、日本語化まで進んでいたのです。しかし、私は個人的にLINEというプラットフォームを好まず、導入を見送りました。
今振り返れば、その直感は「正解」でした。日本国内のLINE Payサービスは2025年4月末をもって終了し、PayPayへと一本化されることが決定しています。もしあの時、目先の利便性だけで導入していれば、今頃またシステムの再構築を強いられていたでしょう。「自分の価値観に合わないものは、たとえ便利そうでも排除する」。この直感こそが、結果としてシステムの長期的な安定を守る防波堤となったのです。
これからの時代、重要なのは「何でも導入すること」ではありません。決済ゲートウェイ一つとっても、高額な導入コストや維持費を無限にかければ良いわけではないのです。限られた予算の中で、何が本当に必要なのかを見極め、不要なものは冷徹に却下する。この「思考の選別」こそが、これからのストア運営の肝となります。Apple Payのような世界標準のデジタル決済をスマートに整える一方で、自分の哲学に合わない、あるいは将来性に疑問があるサービスは潔く捨てる。その取捨選択の積み重ねが、サイトの「品格」と「安心感」を形作ります。
結局のところ、どの拡張機能がベストかは運営者の「哲学」に帰結します。しかし、私の経験から導き出された唯一の真実は、「無償版より、責任の所在が明確な有償版を選び、こまめに更新を続ける情熱を持った開発元を相棒に選ぶこと」です。
最後は、自分自身の判断を信じるしかありません。その判断の中に、流行に流されない「自分なりの基準」があるか。それこそが、長く険しいストア運営を支える唯一の羅針盤になるはずです。