無知は怖い ── 私がセキュリティを重視するようになった、ある入院の話
これまでこのサイトでは、Joomlaの脆弱性や、サイトを守るための確認方法について書いてきました。今回は少し毛色を変えて、技術の話ではなく、私自身の失敗の話をします。なぜ私が、こんなにもセキュリティにこだわるようになったのか。その理由の、いちばん奥にある出来事です。
WordPressを使っていた頃
Joomlaを使う前、私はWordPressでサイトを運営していました。
WordPressは日本語の拡張機能が豊富で、それらを改造する方法を解説した情報もたくさんありました。私も、使いやすそうな機能を見つけては自分好みに改造して使っていました。手を動かすのは好きでしたし、思い通りに動くのが楽しかった。
でも、当時の私には、決定的に欠けていたものがありました。その改造が、どんな危険を招くのか。まったく認識していなかったのです。セキュリティ、つまり安全性というものを、その頃の私は一度も考えたことがありませんでした。
対策を何もしないまま、拡張機能の改造を続ける。今思えば、穴だらけの家の壁に、さらに自分で穴を開けているようなものでした。けれど当時は、それが危ないことだと気づいてすらいませんでした。
入院、そして放置
そんなある日、私は入院を余儀なくされました。OPLL(後縦靱帯骨化症)という難病の手術をしなければならなくなったのです。まさか、同じような手術を、今回を含めて三回もすることになるとは、当時は思ってもいませんでしたが。
入院している間、当然ながら、WordPressのサイトを管理することはできません。サイトは、手入れされないまま放置されることになりました。
退院後に見たもの
退院して、久しぶりに自分のサイトを開いたとき。
見慣れないものが、そこには多数ありました。
そのとき初めて、私は知ったのです。自分が改造した拡張機能の脆弱性を突かれ、サイトがスパマーに改竄されていたことを。楽しんで改造していたあの機能たちが、そのまま侵入口になっていました。
情けない話ですが、私にはどうすることもできませんでした。オロオロするばかりで、しかも体調も優れない。結局、対処できないまま放置し、最終的にはサーバーの運営会社が処理してくれたようです。けれど、サイトは元通りにはならず、不完全なものになってしまいました。
そこから、今へ
この一件が、私を変えました。
私は、3つのことを心に決めました。ひとつ、自分の能力以上のことはしない。ふたつ、何よりもセキュリティを重視する。そして三つ、WordPressのように、素人には管理しきれない無数の拡張機能に頼るのではなく、もっと自分に合ったCMSを選ぶ。
その結果が、今のJoomlaでの運営につながっています。
だから、このサイトを読んでくださっている方はお気づきかもしれませんが、私は基本的に「デフォルトのまま」使います。設定を変えるときも、デフォルトから大きく外れないようにしています。これは技術がないからではありません。むしろ逆です。改造できることと、改造すべきことは違うと、あの痛みを通して知ったからです。
伝えたいこと
無知は、本当に怖い。
でも、いちばん怖いのは、無知そのものではなく、無知に気づかないまま進んでしまうことだと、今の私は思います。あの頃の私は、自分が危ういことをしているという自覚すらありませんでした。
もし今、かつての私と同じように、セキュリティを考えずに拡張機能をいじって楽しんでいる方がいたら、どうか一度だけ立ち止まってみてください。その改造は、あなたの家の壁に穴を開けていないでしょうか。そして、もしあなたが何かの事情でしばらくサイトから離れることになったとき、そのサイトは、あなたがいない間も自分を守れるでしょうか。
派手な機能も、凝った改造も要りません。必要なのは、自分が扱いきれる範囲を守ること。分からないことには、手を出さない勇気を持つこと。それだけで、サイトはずっと安全になります。
私のような思いを、誰にもしてほしくないのです。