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3Dプリンターとの格闘、半年間の自作排気システム開発記

| Alaudae.JP

3Dプリンターを使い始めて間もなく、私はある壁にぶつかりました。

ABS素材でプリントしていると、プリンターのガラスが曇り、独特のプラスチック臭が漂うようになったのです。調べてみると、ABS樹脂はプリント時に**VOC(揮発性有機化合物)**を発生させることが判明しました。

VOC対策については「不要」という意見もあれば、「絶対必要」という意見もあり、専門家の間でも見解が分かれています。しかし、持病を持つ私にとって、今後主力となるであろうABS素材を使う上で、対策は必須だと判断しました。

安易な決意と終わらない試行錯誤

VOC対策装置を市販品で済ませることもできましたが、私は安易に「自作しよう」と決めました。

今振り返れば、この決断が想像を絶する苦労の始まりでした。もし設計から完成までに半年もかかると知っていたら、間違いなく既製品を流用していたでしょう。しかし、当時の私は能天気に自作にこだわり、約半年もの時間を費やすことになりました。

最も辛かったのは、試作と失敗、設計のやり直しの連続でした。

最初の3ヶ月間は、絶望の淵に立たされる日々。試作するたびに失敗し、「一体何をしているんだ」「これは無駄な努力ではないか」と自問自答を繰り返しました。「もう諦めた方が楽だ」という思いに駆られたことも一度や二度ではありません。

諦めなかった先にあった完成と学び

しかし、ここで自作を諦めることは、3Dプリンターでのものづくり自体を諦めるに等しい。そう自分に言い聞かせ、失敗を重ねながらも、さらに3ヶ月を費やしました。

すると不思議なもので、諦めずに続けるうちに、ふとアイデアが閃いたり、イメージが具体的になったりする瞬間が訪れるようになりました。そしてついに、目指していた形、完全にオリジナルのVOC対策装置が完成したのです。

合計で約7kgもの材料を無駄にし、試作に次ぐ試作で設計し直しの連続。リスクを冒してまで自作する必要があったのか?完成した今、その答えは明確です。

完成したVOC対策装置をプリンターに設置し、ABS素材でのプリントを再開して約1週間が経ちました。結果は完璧で、ガラスは全く曇らず、あの不快な匂いも一切ありません。

失敗から得た価値ある経験

この半年間は決して無駄ではありませんでした。

自作の排気処理システムを完成させたことで、私はプリンターの構造やABS素材の特性について深く学ぶことができました。この経験は、今後の3Dプリンター活用における大きな財産となります。

たとえ遠回りに見えても、最低限やるべきことを諦めずにやり遂げることが、未来に繋がることを痛感した半年でした。

この経験は、私に「物事を完成させる力」と「困難に立ち向かう姿勢」を与えてくれたのです。