手芸の材料を海外へ送る方へ
——自分で調べたHSコードが、間違っていました
この記事は、手芸の材料や道具を海外のお客様へ発送する立場の方に向けて書いています。編むほう、作るほうの話ではありません。「作ったもの、仕入れたものを、国境の向こうへ送る」ときの話です。
海外からご注文をいただきました。フランスの方です。
商品を箱に詰めるところまでは、国内発送と何も変わりません。手が止まったのは、そのあとでした。EMSのラベルを作る画面に「内容品」と「HSコード」という欄があるのです。
先に結論を書いておきます。このとき私が入れた番号は、間違っていました。しばらく気づかないまま使っていました。
なぜ間違えたのかを含めて、順に書いていきます。同じところでつまずく方は、たぶん少なくありません。
手書きという選択肢は、もうありません
まず知っておきたいことがあります。EMSのラベルとインボイスは、手書きでは出せません。
内容品の情報をあらかじめ電子データで送ることが求められるようになり、窓口で用紙に書き込めば済む時代ではなくなりました。昔の記憶や古い解説記事を頼りに郵便局へ行くと、そこで立ち往生します。
そこで使うのが、日本郵便の「国際郵便マイページサービス」です。無料で利用でき、お届け先を登録して必要事項を入力すると、送り状と税関告知書(インボイス)が一式で印刷できます。
面倒が増えたようでいて、悪いことばかりでもありません。家で落ち着いて作れますし、お届け先も内容品も保存されるので、次回は選ぶだけで済みます。窓口で慌てながら英語の住所を書くよりは、はるかに気が楽です。
そして、この画面のどこかで必ず立ち止まります。それが内容品の申告です。
HSコードという番号
税関告知書には、内容品の名称を英語で書き、HSコードという番号を添えます。これは世界共通の商品分類番号で、相手国の税関はこの番号を見て関税を判断します。
問題は「PPバンド」という言葉がそのまま辞書に載っていないことです。荷造り用のバンドなのか、手芸材料なのか、プラスチックなのか、繊維なのか。どの棚に置かれる商品なのかを、自分で決めなければなりません。
私は分類表を開いて、自分なりに調べました。
私が最初に選んだ番号
たどり着いたのは、3923.29でした。
理由は、いま振り返ればはっきりしています。PPバンドはもともと荷造り用のバンドです。だから「包装」で探しました。すると第3923項に「容器・包装用のもの」という一群があり、その中の「ポリエチレン以外のプラスチック製のもの」を選んだのです。
日本語の言葉のつながりとしては、何も不自然ではありません。荷造り用のバンド、だから包装の項。むしろ素直な調べ方だったと思います。
けれども、これが違っていました。
どこで間違えたか——「用途」で探すと外れる
第39類(プラスチック及びその製品)は、用途ではなく物の形で項が分かれています。
同じ樹脂でも、粒(ペレット)のままなら第3901項あたり、押し出して棒や形材になれば第3916項、シートやストリップになれば第3920項、ボトルや袋に成形されれば第3923項。形が変われば番号が飛ぶ、という構造です。
つまり第3923項は「容器・包装用の製品」の場所です。袋、箱、ボトル、キャップ。すでに容器のかたちをしているものが入ります。
一方、当店が売っているPPバンドは、巻かれた帯です。何かを包んでいるわけではなく、これから何かになる材料の形をしています。したがって、袋や箱ではなく、板・シート・ストリップの第3920項。ポリプロピレン製なので3920.20になります。
「荷造り用」という言葉は、商品の名前についているだけで、いま送ろうとしている物の形とは関係がなかったのです。用途の言葉に引っ張られたのが、私の間違いでした。
もうひとつの分かれ道は「幅」でした
ちなみに、プラスチックの帯には第39類に入らない場合もあります。見かけの幅が5mm以下のものは、繊維の仲間(第54類)として扱われるのです。
当店のPPバンドは6mm・15mm・21mmで、すべて5mmを超えています。この点は問題なく第39類側でした。
1mm違えば別の棚に移る。数字を1つ書くだけの欄なのに、決めるまでにずいぶん時間がかかりました。
加工して売っている場合、原産国はどこになるのか
内容品には原産国の欄もあります。ここでも手が止まりました。
この欄は「発送する国」ではなく「その品物が作られた国」を書くところです。日本から送るから日本、ではありません。
では、当店のように輸入した材料を仕入れ、長さと幅を加工して売っている場合はどうなるのか。手を加えているのだから日本製と言えそうな気もします。
調べてみると、原産国が移るのは、その加工によって品物に「実質的な変更」が加わったと言える場合に限られます。そして、単なる切断や選別、包装のやり直し、ラベルの貼り替えといった作業は、これに当たらないとされています。判断の目安としてよく使われるのがHSコードで、加工する前と後で番号が変わるかどうかを見ます。
当店の場合、加工前も加工後もポリプロピレンのバンドであることに変わりはなく、番号は同じ3920.20のままです。番号が動かない以上、原産国も動かない——切って幅を揃えるだけでは日本製にはならない、と考えるのが自然でした。
これは少し意外に感じられるかもしれません。手をかけている実感がある作業ほど、通関の世界では「軽微な加工」に分類されがちなのです。逆に言えば、原産国が日本になるかどうかは、頑張ったかどうかではなく、品物の性質そのものが変わったかどうかで決まります。
なお、HSコードと原産国は、互いに独立した別々の欄です。原産国が変わったから番号が変わる、ということはありません。ここも私が一度混同したところなので、念のため書いておきます。
編み上がった作品を送るときは、また番号が変わります
そしてもうひとつ、大事な話があります。
材料としてのPPバンドと、それを編んで仕上げた作品とでは、HSコードが別になります。
編み上がったかごやバッグは、もうプラスチックのストリップではありません。帯を組んで作られた品物なので、プラスチックの類(第39類)を離れ、組物・編組品を扱う第46類の領域に移ります。
さらにややこしいのは、同じ編み上がった品でも、バッグの形をしたものは第42類(かばん類)との間で判断が分かれることがある点です。ここまで来ると、素人が分類表とにらめっこして決めきれる範囲を超えています。
材料を売るときと、作品を売るときで番号が違う。同じ工房から出ていく同じ素材の品なのに別の棚に入る——これは知らないと思いつきません。作品の海外発送も考えている方は、先に押さえておいてください。
確実にしたいなら、税関に聞けます
ここまで書いてきて言うのも何ですが、私は通関の専門家ではありません。この記事に書いたのは、自分の商品について調べて出した結論と、そこに至るまでに一度間違えた記録です。
確実にしたい場合は、税関の事前教示制度が使えます。品物の情報を提出すると、この品はこの番号だという回答を文書でもらえる制度で、費用はかかりません。
私も、最初からこれを使えばよかったと思っています。自分で調べること自体は無駄ではありませんでしたが——調べたからこそ、なぜ間違えたのかが分かりました——最後にひとこと確認しておけば、間違った番号を使わずに済みました。
分からないまま数字を書くより、聞いてから書くほうがずっと早いです。
一度決めたら、内容品マスターに登録しておく
マイページサービスには「内容品マスター」という機能があります。商品名(英語)、単価、原産国、HSコードなどをあらかじめ登録しておける仕組みです。
一度登録してしまえば、次回からは選ぶだけで済みます。私は幅ごとに登録しました。海外注文は頻繁には来ませんから、半年後の自分は絶対に忘れています。忘れる前提で残しておく——これは通関に限らず、個人でやっている作業すべてに言えることかもしれません。
金額の書き方と、消費税のこと
内容品の価格は、実際に販売した金額を書きます。安く書けば相手の関税は減りますが、それは虚偽申告です。
なお、海外のお客様への販売には日本の消費税が(輸出免税)かかりません。今回の商品代金は7,000円で、これがそのまま海外向けの本体価格になりました。
送料のほうが高い、という現実
そして、これが海外発送のいちばん正直な部分です。
フランスはEMSの第3地帯にあたり、今回の送料は61.10ユーロでした。商品代金は43.20ユーロ。つまり、送料が商品より高かったのです。合計で104.30ユーロ。
お客様はそれを承知で注文してくださいました。ありがたいことですが、当店ではまとめ買いのご相談をいただいたとき、数量によっては「ご自身で直輸入されたほうが安くなります」と正直にお伝えすることがあります。送料の構造上、そうなってしまう場合が本当にあるからです。
売る側がこれを黙っていると、届いた箱を開けたお客様が最初に感じるのは、嬉しさではなく計算です。それは避けたい。
おわりに
間違いを公開するのは気が進まないものですが、この件については書いておく価値があると思いました。
「荷造り用だから包装の項」という発想は、私だけのものではないはずです。同じ入口から入って、同じ棚にたどり着く人が必ずいます。その方が、この記事のどこかで一度立ち止まってくれたら、書いた意味があります。
最初の1回は、どこから手をつけていいか分からないものです。この記録が、そのとっかかりになればと思います。