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警察官は、電話で「あなたが犯人ですよね」とは言わない

| Alaudae.JP

減るどころか、秋田県内ではまた被害者が増えてしまっている。

秋田市の三十代の男性が、警察官を名乗る男からの電話をきっかけに、現金七百十万円をだまし取られた。最初の一言は「あなたの口座が犯罪グループの資金洗浄に利用された疑いがあります」だったという。

三十代である。ここを見落としてほしくない。この手の詐欺は年寄りが引っかかるものだと思われがちだが、秋田で報じられている被害者を並べていくと、二十代も三十代も四十代も六十代も七十代も八十代もいる。年齢は関係がない。関係があるのは、その電話を受けた瞬間に、考える時間があったかどうかだけだ。


手口は、実のところ単純だ。

まず電話がかかってくる。最近は「+」で始まる見慣れない番号からの着信が多い。海外から発信しているように見せかけて、発信元をたどりにくくしている。

相手は警察官を名乗る。それも「警視庁の何々です」と、所属と名前まで名乗る。堂々としていて、口調が落ち着いている。ここで多くの人が信じてしまう。

そして言われるのが、あなたの名義の口座が犯罪に使われている、あなたが容疑者になる可能性がある、という話だ。身に覚えがないから、こちらは動揺する。動揺した瞬間から、主導権は相手にある。

次に、話の場所が移される。電話からメッセージアプリやビデオ通話へ誘導される。ここで画面に警察手帳らしきものや、逮捕状らしき書類が映し出される。もちろん偽物だが、動揺している人間に真贋の見分けはつかない。しかも通話アプリに移ってしまえば、通話記録も相手の番号も残りにくくなる。

そして必ず、こう言われる。これは捜査上の秘密だから、家族にも誰にも話すな。

ここが最大の仕掛けだ。人に話されると嘘がばれるからだが、言われた側は「自分は重大な捜査に巻き込まれている」と受け取る。相談相手を自分から切り離してしまう。

最後に金の話になる。あなたの潔白を証明するために資産を確認する必要がある、指定の口座に一時的に移してくれ、後で必ず返す。ここまで来たら、もう振り込むまで電話を切らせてもらえない。


なぜ引っかかるのか。

恐怖と、時間の圧力と、権威と、孤立。この四つを一度にかけられているからだ。

人間は怖いと頭が回らなくなる。そこへ「今すぐ」と急かされ、相手が警察という肩書きを持ち、しかも誰にも相談するなと言われる。冷静に考える条件が、ひとつ残らず潰されている。

つまりこれは頭の良し悪しの問題ではない。心理の弱点を狙って設計された攻撃であり、条件が揃えば誰でも引っかかる。自分は大丈夫だと思っている人ほど危ない。


ただ、見破る方法はある。しかも、たったひとつ覚えておけばいい。

本当にあなたが犯人なら、警察は電話などしてこない。

考えてみればわかる話だ。捜査する側が、容疑者に向かって「あなたが犯人ですよね」とわざわざ電話をかけるだろうか。逃げられるし、証拠を消される。そんな捜査があるわけがない。本当にあなたが疑われているなら、それはある日突然、自宅に警察官が大勢で来るという形で起きる。

もうひとつ。警察官が電話で、口座の金を動かせと言うことは絶対にない。ATMへ行けと言うこともない。暗号資産を買えと言うこともない。この一言が出てきた時点で、相手が何を名乗っていようと詐欺だ。

そしてこれは、覚えておく価値がある。仮に本物の警察官がこんなことを言ってきたとしても、それは正義の執行ではない。職権を使った犯罪だ。つまり相手が偽物でも本物でも、この要求に応じる理由はどこにもない。本物かどうかを見分けようとする必要すら、実はない。


では、どうするか。

出ない。これがいちばん確実だ。知らない番号、特に「+」で始まる番号には出なくていい。用があるなら、まともな相手なら別の形で連絡してくる。

出てしまったら、切る。話を最後まで聞く必要はない。失礼だと思わなくていい。相手は詐欺師だ。

確認したいなら、相手が教えた番号には絶対にかけ直さない。自分で調べた警察署の番号にかける。この一手間だけで、この詐欺はほぼ成立しなくなる。

そして、家族か誰かに話す。誰にも言うなと言われたのなら、なおさら話す。誰にも言うなという指示そのものが、詐欺の証拠だからだ。

判断に迷ったときの相談先だけは、調べる前に覚えておいてほしい。

警察相談専用電話 #9110


緊急ではないが警察に相談したいときの番号だ。慌てている最中に調べろというのは無理があるので、これだけは先に頭に入れておく価値がある。


それともうひとつ、最近多いのが自動音声の電話だ。

勝手にかけてきて、機械の声で料金の未納だの、口座の確認だのと言い、番号を押させようとしてくる。これも無視するか、即座に切るべき電話だと思っている。

自動音声には二つの狙いがある。ひとつは、機械の声のほうが公的な機関らしく聞こえるという心理。もうひとつが厄介で、案内に従って番号を押した時点で、この番号は生きていて、しかも反応する人間が出た、という情報が相手に渡る。そこから先は本物の詐欺師につながれるか、後日また別の電話がかかってくる。押すという行為そのものが、こちらの情報を差し出している。

そもそも、勝手に電話をかけてきておいて機械に応対させるという時点で、無礼以外の何物でもない。まともな用件のある相手が、そんなかけ方をするだろうか。

こういう形で個人情報を集めている連中もいるということは、注意喚起しておきたい。


最後にひとつ。

騙されるのは恥ずかしいことではない。

被害に遭った人の多くが、恥ずかしくて誰にも言えなかったと言う。その沈黙が、次の被害者を生む。悪いのは百パーセント詐欺師のほうであって、騙された側ではない。

もし引っかかってしまったら、すぐに警察と、振込先の金融機関に連絡してほしい。早ければ止まることがある。恥じている時間が、いちばんもったいない。

そして、この話をぜひ誰かに話してほしい。親でも、子でも、隣の人でもいい。詐欺は人と人が話すことを嫌う。だから話すことが、そのまま対策になる。